つい、ポーッと見とれてると、由未お姉さんはバッグの中からプレゼントの包みを2つ取り出して、私にくれた。

「これ、卒業のお祝い。で、こっちが入学のお祝い。」

私に!?
びっくりしてドキドキする。

……てか!
卒業も入学も、由未お姉さんだって!……結納もしはるのに!
私、何も準備してない!

オロオロしてると、家の中からお母さんと義人氏が出てきた。
「あら、希和ちゃんにだけお土産?うちには?」
「ケーキ買うてきた。」
由未お姉さんは紙袋をお母さんに渡した。

「希和、何もろたん?」
義人氏がそっと私の肩に触れた。
思わず救いの目を義人氏に向けた。

どうしよう!
私、由未お姉さんにプレゼントなんて、考えもしなかったよ!
泣きそう。

涙目の私に気付いた義人氏が、気持ちを読み取ろうとじっと瞳を覗き込んでくれた。
「ほら、思春期の少女に気安く触れてんと!」
由未お姉さんが、義人氏の手の甲を軽くはたいた。

そのまま居間に移動して、みんなでケーキをいただきながら歓談した。
「それ!ピンクの真珠!恭兄さまが、絶賛してた!」
由未お姉さんに指摘されて、私は首元のネックレスに触れた。

お母さんがニコニコしてうなずいた。
「モノもいいんやろうけど、希和に似合ってるしな。……ほな、コレも恭匡さんの見立て?」
義人氏に促されて、私は慌てていただいたプレゼントを開封した。

ミキモトの濃紺のケースの中には、銀色のシャーペンとボールペン。
どちらも同じデザインで、ゴールドのリボンモチーフと真珠がついていた。
なんて上品でかわいいんだろう!

「素敵……どうしよう。すごく、うれしい、です。」
ドキドキして、言葉が出てこない。

はくはくしてると、義人氏がポンポンと私の頭を撫でた。
「よかったな。希和に、よぉ似合うわ。」

私に?
いや、むしろもったいないと思うんだけど。
でも……うれしい。
思わず、ギュッと抱きしめた。


その夜。
自室で本を読んでると、遠慮がちにドアがノックされた。
……お父さんでもお母さんでもない……義人氏も留守だし……由未お姉さん?

「はぁい。」
慌ててドアを開けると、由未お姉さんがティーセットを携えて立ってらした。
「希和子ちゃん、紅茶好きって聞いて……これ。一緒に飲まない?」

緊張してはる……。

「ありがとうございます。あ、どうぞ。入ってください。どうぞ。」
私も思いっきり焦ってカチコチになってしまった。

「あの……おめでとうございます。結納。」
黙って紅茶を飲んでるだけってのもおかしいので、とりあえずそう言ってみた。

「ありがとう。何かまだよくわかんないんだけどね~。そうだ!聞いた!希和子ちゃん、受験トップ合格だったって?すごいね~~~。」
由未お姉さんはそう言ってくれたけど……現役で東大合格したヒトに言われても……ただのプレッシャーというか……

何となく私達の会話は噛み合わないまま、ぎくしゃくと時が過ぎて行った。