夢が醒めなくて

「あの、毎年、出品されてるから……全校コンクールで入賞したら報告しよう思ってたんですけど……ごめんなさい。ダメでした。」

そう頭を下げたら、どこにいたのか、義人氏が飛んできて私の頭をわしゃわしゃにして撫でた。
「謝ることちゃうわ!すごいことなんやって!府で一番やで?めちゃすごいで?しかも、なんなん?毎年って!すごいすごいすごい!」

……もみくちゃにされながら、やっとこの趣旨がわかってきた。
お祝いしてくれてるんだ。

でも、何で祇園で舞妓さん……あ、そっか!
感想文に花街のことがわからないと書いてたからか。

「たけくらべ」の美登利は、姉と同じ遊女になることが決まっている少女なのだが、今の私には全く理解できない状況だと感想文に書いて、今日読んだ!
義人氏はそれを聞いて、お祝いの席にココを選んだのか。

……何とまあ、豪快な。

「舞妓は遊女とは違うけどな。」
小声でそう囁きつつ、義人氏が私を金屏風の前に連れてった。

壮観!

ずらっと並んだ花のような舞妓さんと、黒い着物に鬘の芸妓さん達。
「おめでとうさんどす。」
笑顔も祝福の言葉もなめらか。
代わる代わる、私にもジュースをお酌したり、おしゃべりに来てくださるんだけど、どのかたもまだお若いのに接客のプロだった。

お父さんの酔った戯れ言を笑顔で流し、お母さんに可愛く甘え、義人さんには媚び媚び……そして私に対してはまるで赤ちゃんかペットを愛でるように最上の笑顔と親しみやすい言葉で話し掛けてくれた。
時事ネタが多いところを見ると、社会のニュースだけじゃなく、映画やベストセラー本なんかも勉強してることが伝わってきた。
すごいなあ。

落ち着いてよく見ると、お料理も美味しいけれど、器がまた粋で素敵。
お母さんは漆器がお好きらしく、熱心に女将に尋ねていた。

女将は、京舞を見せてくださったり、簡単なゲームをしたり、私達を飽きさせないように盛り上げてくださった。

「今日は、ありがとうございました。」
明日も学校なので、私はお母さんと先に退座した。

車に乗り込んでからお礼を言うと、お母さんは私の手を取って、撫でた。
「義人から聞いて驚いたわ。希和ちゃん、優秀なのね。難しい本なのに。」

「……昔の言葉が好きなんです。でも、やっぱり、全国コンクールで入賞できなくて……くやしいです。」

本音だ。