「どっちも受験できないんですか?」
硫黄の変なにおいに首を傾げながら、義人氏母にそう聞いた。
「たぶん、無理。同じ日のはず。気にしなくていいんよ。義人と同じ学園がいいならそっちになさいね。」
……多少の誤解を居心地悪く感じながら、私はうなずいた。
慣れてくると、硫黄の温泉は確かに効果が強そうな気がした。
身体の中に熱が蓄えられたような気がする。
義人氏母は奥の大きな窓を開けた。
秋の冷たい夜風が、火照った身体に心地よかった。
「湯当たりしないように、ちょっとずつ慣らしてね。いらっしゃい。髪を洗ってあげるわ。」
え……。
これには、かなりの抵抗感を覚えた。
髪を洗うって、無防備に首やうなじを全開することになるしないか。
正直なところ逃げ出したかった。
でも、義人氏母の何の疑いもない好意の笑顔に背くことはできなかった。
私は、観念して湯船から出て、洗い場の椅子に座った義人氏母のそばに行った。
ヒトに髪を洗ってもらった記憶はない。
でも義人氏母の指がとても優しく地肌と髪を滑り、ものすごーく気持ちよかった。
抵抗感も恐怖心も忘れたぐらい、うっとりした。
髪の次は、背中を洗って下さった。
背中の洗いっこは、いつも施設でしていたけれど、こんなに気持ちよくはなかったなあ。
それに、義人氏母の背中の白さと柔らかさってば!
マシュマロ?
お餅?
……ビーナスってこんな感じなのかな。
めちゃめちゃ美人というわけではないけれど、いつも笑顔で幸せそうな義人氏母は、とても素敵な女性だと思う。
私も、こんな女性になれるかな。
まずは、笑顔から、か。
湯けむりで曇る鏡に向かって、ちょっと微笑んでみた。
けど、鏡の中の私は泣きそうな顔しかしてなかった。
笑うのって、難しい。
途方に暮れてると、義人氏母がふわりと背後から私を抱きしめてくれた。
「焦らなくていいから。ゆっくり、いろんな経験していこう。楽しいこと、いっぱいしよう。そしたら、勝手に口元が緩んでくるから。自然に笑えるから。ね。無理しないでいいのよ。」
優しい。
義人氏母の優しさに包まれて、私はまた泣いてしまった。
本当に天使のような女性だ。
この人を、お母さん、って呼んでいいなんて……私、幸せだ。
お母さん。
大好き。
竹原希和子になって、初めてのお正月を迎えた。
残念ながら、由未お姉さんは京都に帰って来られなかった。
受験勉強が佳境だそうだ。
でも、それは私も同じこと。
お正月でも容赦なく義人氏は私に受験のノウハウを叩き込むつもりらしい。
硫黄の変なにおいに首を傾げながら、義人氏母にそう聞いた。
「たぶん、無理。同じ日のはず。気にしなくていいんよ。義人と同じ学園がいいならそっちになさいね。」
……多少の誤解を居心地悪く感じながら、私はうなずいた。
慣れてくると、硫黄の温泉は確かに効果が強そうな気がした。
身体の中に熱が蓄えられたような気がする。
義人氏母は奥の大きな窓を開けた。
秋の冷たい夜風が、火照った身体に心地よかった。
「湯当たりしないように、ちょっとずつ慣らしてね。いらっしゃい。髪を洗ってあげるわ。」
え……。
これには、かなりの抵抗感を覚えた。
髪を洗うって、無防備に首やうなじを全開することになるしないか。
正直なところ逃げ出したかった。
でも、義人氏母の何の疑いもない好意の笑顔に背くことはできなかった。
私は、観念して湯船から出て、洗い場の椅子に座った義人氏母のそばに行った。
ヒトに髪を洗ってもらった記憶はない。
でも義人氏母の指がとても優しく地肌と髪を滑り、ものすごーく気持ちよかった。
抵抗感も恐怖心も忘れたぐらい、うっとりした。
髪の次は、背中を洗って下さった。
背中の洗いっこは、いつも施設でしていたけれど、こんなに気持ちよくはなかったなあ。
それに、義人氏母の背中の白さと柔らかさってば!
マシュマロ?
お餅?
……ビーナスってこんな感じなのかな。
めちゃめちゃ美人というわけではないけれど、いつも笑顔で幸せそうな義人氏母は、とても素敵な女性だと思う。
私も、こんな女性になれるかな。
まずは、笑顔から、か。
湯けむりで曇る鏡に向かって、ちょっと微笑んでみた。
けど、鏡の中の私は泣きそうな顔しかしてなかった。
笑うのって、難しい。
途方に暮れてると、義人氏母がふわりと背後から私を抱きしめてくれた。
「焦らなくていいから。ゆっくり、いろんな経験していこう。楽しいこと、いっぱいしよう。そしたら、勝手に口元が緩んでくるから。自然に笑えるから。ね。無理しないでいいのよ。」
優しい。
義人氏母の優しさに包まれて、私はまた泣いてしまった。
本当に天使のような女性だ。
この人を、お母さん、って呼んでいいなんて……私、幸せだ。
お母さん。
大好き。
竹原希和子になって、初めてのお正月を迎えた。
残念ながら、由未お姉さんは京都に帰って来られなかった。
受験勉強が佳境だそうだ。
でも、それは私も同じこと。
お正月でも容赦なく義人氏は私に受験のノウハウを叩き込むつもりらしい。



