夢が醒めなくて

そう聞くと、義人氏母はマジマジと私を見た。
「……そういうわけでもないかも。ごめんなさい。私の趣味よ。間違ったこと教えちゃダメね。……そうね、これから、あちこち旅行もしましょう。うれしいわ。私、一緒に旅行を楽しむ友達もいないし。希和子ちゃんが来てくれると、すごくうれしい。まずは、有馬温泉から行きましょうね。」

「はい。お母さん。あ、でも、受験が終わるまで待ってください。」
そう言ったら、義人氏母は苦笑していた。

「はいはい。希和子ちゃん、まじめね~。ほどほどにね。学校なんてどこでもいいんだから。……てか!ねえ?何で義人たちの学園なの?私の母校もすごくいいとこよ?中学はセーラー服よ?」

……セーラー服……ねえ。
「よくわからないんですけど、義人……お兄さんも、由未お姉さんも同じ学校だったと聞いたので、私も!と思いました。」
そう答えたら、義人氏母はため息をついた。

「まあ、ね。女子校やから、義人は無理としても、由未は私の母校に入れたかったのよ。なのに、学力が足りなくて……」

え?
義人氏母の母校のほうが偏差値が高い学校なの?

驚いた私に、義人氏母は慌てて説明した。
「これ、由未には内緒ね。私の母校はガチで受験しなきゃいけなくて、あの頃の由未の偏差値では到底届かなかったの。でも、あっちの学園は、まあ、もちろん偏差値の高い学園なんだけど、義人も通ってたし、お父さんの顔も効くから高下駄履かせてもらえたのよね。」

……えー。
なんか、すごいこと聞いてる気がする。

「だから希和子ちゃんも、そんなにがんばらなくてもって思うんだけど……義人は、希和子ちゃんは実力で合格できるって言い張ってるのよね。頑固に。」

ドキンと、胸が鳴った。
「そうですか。模擬試験も受けてないのに……受かるって思ってくれてはるんですね。うん。がんばります。」
自分でもよくわからないけど、私はそう言っていた。

義人氏母は、小さく息をついた。
「……あの子に洗脳されちゃ、ダメ……って言っても、こればかりはしょうがないか。まあ、希和子ちゃんが決めた道を応援するからね。」

……言葉が出ない。
反論したいのに、否定したいのに、何も言えない。

確かに、義人氏の影響を、すでに私は少なからず受けている。

でも、義人氏母の言い方だと、私が義人氏を好きで、言いなりみたいじゃない?

そんなんじゃない!んだけどなあ。