「うん。『ございます』は、もう、やめようか。『お母さん、ありがとう。』。もちろん標準語を使う必要もないから。京言葉で『お母さん』『ありがとう』。ね?」
私は慌てて、言い直した。
「ありがとう。……お母さん。」
初めて、お母さんと呼んだ。
……言い終えてから心の中に、何とも言えない甘酸っぱい、気恥ずかしい、そして、喜びなのか悲しいのか説明のつかない感情が巻き起こり、涙がこぼれた。
義人氏母は、しゃがんで私を下から見て、そっと髪を撫でた。
「無理しなくていいから。でも、仲良くしましょう。……ね、髪を梳(と)かして、結んであげたいんだけど……いい?」
ドキッとした。
「あの……できたら髪は……おろしてたいんです。首を出すのが嫌で……。」
無碍に断るのは失礼だろうと、そう言ってみた。
すると、義人氏母はうなずいてくれた。
「ん。わかった。じゃあ、ハーフアップまではOKね。……ありがとう。うれしいわ。」
また涙がにじんだ。
お互いに、手探りで、歩み寄ろうとしてるのがわかりすぎるほどわかった。
「ね。お風呂に入らない。前に泊まりに来てくれた時には、義人と勉強を始めちゃって……お部屋のシャワーで済ましたでしょ?うち、温泉あるのよ。加温だけど源泉掛け流しなの。1時間ほどで溜まるから、一緒に入ろう。」
温泉!
私は、コクコクッと何度もうなずいた。
竹原家の温泉は、ここが一般家庭じゃないこと如実に語っていた。
檜風呂なんて、管理が大変だと思う!
施設の檜の椅子も、毎日お掃除してても黒くなったのに。
無色透明無臭の単純温泉は35度とぬるめだけど、少し温めると気持ちよかった。
湯船もけっこう大きい。
「最近はね、ここにこれを入れるのが私のお気に入り。」
そう言って、義人氏母が取り出したのは、ボトルに入った黄色い液体。
「温泉の素か何かですか?」
「うん。硫黄。草津温泉ハップとか、別府の明礬温泉とか、やっぱり温泉は硫黄よね~。」
そう言って、義人氏母はトポトポと黄色い液体を少し湯船に注いだ。
もわっと湧き上がる異臭。
……ちょっと、臭い。
考えてみれば、私は温泉をほとんど知らない。
京都には冷泉しかないし、身近な存在じゃない。
修学旅行の時、宮島の温泉に入ったけれど塩っぽかったっけ。
「温泉は硫黄が多いんですか。」
私は慌てて、言い直した。
「ありがとう。……お母さん。」
初めて、お母さんと呼んだ。
……言い終えてから心の中に、何とも言えない甘酸っぱい、気恥ずかしい、そして、喜びなのか悲しいのか説明のつかない感情が巻き起こり、涙がこぼれた。
義人氏母は、しゃがんで私を下から見て、そっと髪を撫でた。
「無理しなくていいから。でも、仲良くしましょう。……ね、髪を梳(と)かして、結んであげたいんだけど……いい?」
ドキッとした。
「あの……できたら髪は……おろしてたいんです。首を出すのが嫌で……。」
無碍に断るのは失礼だろうと、そう言ってみた。
すると、義人氏母はうなずいてくれた。
「ん。わかった。じゃあ、ハーフアップまではOKね。……ありがとう。うれしいわ。」
また涙がにじんだ。
お互いに、手探りで、歩み寄ろうとしてるのがわかりすぎるほどわかった。
「ね。お風呂に入らない。前に泊まりに来てくれた時には、義人と勉強を始めちゃって……お部屋のシャワーで済ましたでしょ?うち、温泉あるのよ。加温だけど源泉掛け流しなの。1時間ほどで溜まるから、一緒に入ろう。」
温泉!
私は、コクコクッと何度もうなずいた。
竹原家の温泉は、ここが一般家庭じゃないこと如実に語っていた。
檜風呂なんて、管理が大変だと思う!
施設の檜の椅子も、毎日お掃除してても黒くなったのに。
無色透明無臭の単純温泉は35度とぬるめだけど、少し温めると気持ちよかった。
湯船もけっこう大きい。
「最近はね、ここにこれを入れるのが私のお気に入り。」
そう言って、義人氏母が取り出したのは、ボトルに入った黄色い液体。
「温泉の素か何かですか?」
「うん。硫黄。草津温泉ハップとか、別府の明礬温泉とか、やっぱり温泉は硫黄よね~。」
そう言って、義人氏母はトポトポと黄色い液体を少し湯船に注いだ。
もわっと湧き上がる異臭。
……ちょっと、臭い。
考えてみれば、私は温泉をほとんど知らない。
京都には冷泉しかないし、身近な存在じゃない。
修学旅行の時、宮島の温泉に入ったけれど塩っぽかったっけ。
「温泉は硫黄が多いんですか。」



