体育館の1番後ろ。

目立たないところに昇はいた。

見つけた瞬間、友香の心臓は、今までで1番ではないかというくらいに早く脈打った。


昇の隣には誠もいて、2人で話しているようだ。

そのことにも驚いたが、来てくれていたことに友香は喜ぶ。

自然と顔がほころび、さっきまでの緊張がどこかにいってしまったように感じた。


そして思い出す部長の言葉。

朝、耳元で囁かれたその言葉が、今鮮明に頭の中に浮かんできた。



『歌をうたうときには、誰か相手を決めて、

その人のために、

って思いながらうたうと、声がほんとに届くんだよ』



誰に向けてうたうかなんて、考えなくても決まってる。

友香は軽く深呼吸してから、また前を見据えた。


私は、あなたに届くようにと歌います。


友香が見つめる先には、昇が。



届くように。

届きますように。



そんな思いで。