説明されたことによれば、合唱部の発表はバンド演奏のあと、休憩を挟んであるらしい。

耳をつんざくようなバンド演奏を横に、友香たちは自分達の順番を待っていた。

舞台袖に待機し、体育館の様子をうかがう。


「人多いね、びっくりした」

「でも、このあと休憩入るんでしょ?私たちが出るときにはがらがらになってるかもしれないよ」

「えー、やだー」


1年生が、こそこそと囁きあっているのを聞いて、友香ははぁっとため息を吐いた。


「こら、宮内。ため息吐くと幸せにげるのよ」

はい深呼吸、と部長が友香に声をかける。


「やっぱり緊張するもんですね」


「しないほうがおかしいのよ」

部長は茶化すように言い、

「彼氏も来てるかもしれないし、がんばりなよ」

と言った。
まだ昇との関係を勘違いしているようだ。

「だから、あれは違うんですって!昇とはそうゆう関係じゃないんです!」


言っても信じてくれず、部長は笑うばかりだ。

諦めたように友香はうなだれる。

そうこうしているうちにバンド演奏が終わり、休憩時間に入る。

さっきまでくすくすと囁きあっていた1年生たちも、その頃には表情を引き締めていた。

友香もきゅっと口を結び、気合いを入れる。