じっとこちらを見てくる友香の視線を気にしないように、
はあっとため息をつき、返事をする。

「分かった、いいよ。何が聞きたい?」

実際、自分がこんなことを言うなんてと昇自身驚いていたが、友香も驚いていた。

どうやら、昇が話してくれるとは、本当のところ思っていなかったらしい。

友香は少し考えてから、「家族はどんな人?」と聞いた。




家族―




昇はその単語を頭のなかで復唱する。


「…家族のことは話したくない」


ぶっきらぼうにそう言い放ち、続けて


「それ以外にして」


と言った。

「わ…かった。じゃあ、誕生日いつ?」

すぐに切り替えて友香がありがちな質問をする。

「…1月1日」

「お正月生まれなんだ?あっちなみに私、8月10日」

別に聞いてないけど、
なんて思いながらも昇はそんなことを口にはしない。

「じゃあ、血液型は?」

これも定番か?

「あっ、待って。私当てる!えっと…B型?」

友香は探るような目で見てくる。

だが、その目から顔をそらし答える。

「違う。O型」

「O型なのー?なんか意外…じゃあ私、何型に見える?」

昇は実際、血液型なんかに興味はなく、
「何型か」なんてことは到底検討をつけることはできなかったが、
とりあえず返事をする。

「…B型?」

そう言うと友香の顔がぱーっと明るくなった。

「正解!
わー、うれしー、当ててくれた。
知ってる?O型の人ってたいていどの血液型とも相性いいんだよ」

と、最初に答えることを拒否した「家族」のことだけは、
一切触れることはなく友香は質問を続けた。

その質問は、チャイムが鳴るまで続くこととなる。

チャイムが鳴ると、友香は「先に戻るね」と屋上をあとにした。