誠と別れてから、友香は音楽室へと向かう。

合唱のソロの本番は明日だ。

ちゃんと歌えるかまだ不安は胸にある。

だが、誠に返事をしたことで、友香は少しだけ気持ちが軽くなっていた。

最近ずっと調子が出ずに、みんなに迷惑をかけていたのだ。

悩み事があってはソロに集中できない。


音楽室に着くと、すぐに先程別れた友達がやってきた。


「友香!大丈夫だった?」

本当に心配していたようで、曇った表情をしている。


「うん、大丈夫。ありがと」


「ほんとに?」


「ほんとに。むしろ元気になったし!
だから明日のソロも成功する気がするの」

にっこり笑って言うと、友達もようやく納得したようで、「そっか」、と笑い返す。


その話を聞いていた部長は、友香の頭をまたぱこっと軽く叩いた。


「何か最近悩んでたみたいだけど、ようやくふっきれたみたいね」


「あ、はいっ!ご迷惑をおかけしました。
明日はがんばります」


友香は頭を軽く下げた。

部長にまで心配をかけていたのか、と少し落ち込む。

「さ、宮内も調子いいみたいだし、今日の練習はじめよっか」

と部長が言い、ばらばらに散らばっていた部員たちが集まった。

今は、明日のことだけ考えようと、友香も急いで自分の位置につき、最後の練習がはじまった。