それからストッパーがはずれたように誠は話し始めた。
話さなかった期間にあったことや、文化祭のこと。
まだ少しだけぎこちなさは残るものの、
確実に話さなかった期間の溝を埋めていった。
昇はただ、相づちをうつことしかできなかったが、
誠が話しているので気持ちが楽だった。
そうして話をしていると、体育館内に放送が流れた。
『まもなく、次の演目が始まります。
次は合唱部の発表です』
よく通る女の子の声が体育館に響く。
さっきとは違い、盛り上がりはなく、比較的落ち着いた空気が流れた。
ステージ前を陣取る人もなく、
体育館に用意された椅子に腰をおろす人がほとんどだ。
それでも観客が少ないわけではなく、
さらに照明も暗くなり、発表前の独特の雰囲気が流れていた。
放送された内容に、誠の体がぴくっと震えた。
その様子を、昇が見逃すはずもなく、昇も動きを止める。
おそらく、“合唱部”という単語に反応したのだろう、
昇は直観的に思い、誠の表情をうかがった。
照明が暗くなったので、はっきりとは表情が分からない。


