昇はそこまで聞いて、ふぅとため息をはいた。
くるりと後ろを向き、もと来た道を戻りはじめる。
カバンは持ったまま、体育館に行くことにした。
体育館では今ちょうど、バンド演奏がされており、
前のほうに人が集まっていた。
あまりの盛り上がりに、体育館の温度は少し高くなっている。
その様子に昇は一瞬顔をしかめるが、
仕方なしに一番後ろの空いている席に適当に腰をおろした。
後ろのほうには人はあまりいなく、がらがらだ。
しばらくそのままで舞台で行われるパフォーマンスを眺めていると、
少し眠気が襲ってきた。
体育館の温度のせいもあるだろう。
そうしてぼーっとしていると、昇の隣の席に誰かが腰をおろした。
昇は眠たかったので、たいして隣に注意を払わずにいたが、
突然向こうから声をかけてきた。
「…昇」
その声は遠慮がちで少し小さかったが、
昇の頭は聞いてすぐに覚醒した。
声がしたほうにゆっくりと顔を向け、
昇は相手の名前を呼んだ。
「誠、久しぶりだな」


