会計係をすることになった昇は、
ちらほらとやってくるお客を見ながらぼぉっと過ごす。
用がすんだお客がお金を払いにくるのを見て、会計の準備をする。
そして、お客が誰もいない時間がやってきた。
すると、さっきまで視線もあわせようとしなかった友香がそばにきた。
「あの…昨日、ごめんね」
顔をあげずに、衣裳のすそを掴みながら友香が言う。
その声はとても小さい。
「別に、俺気にしてないし、宮内も、気にしなくていいよ」
「でも」
言い掛けた友香の言葉をさえぎって、昇は言う。
「そうやって気にされるほうが、俺も気になるし。
普通でいいから」
友香が顔をあげたのが目の端に映った。
と、またお客が教室に入ってくる。
友香は先程よりも少し元気な素振りでお客に対応しにいった。
普通でいい。
それは本心だ。
友香には普通に話してほしい。
接客する友香を見ながら、昇はそう思った。


