何も言葉にせず、立ったままの昇を友香はじっと見つめていた。
「…ごめん、やっぱり言いたくないよね」
顔をそらしながら友香が言う。
しかし、
何も言わなかった昇が、友香の隣に少しの距離をおいて腰をおろした。
「昇?」
不思議に思った友香は、昇に呼び掛ける。
反応はなく、こちらに顔をむけることもない。
だが、昇の口が静かに動いた。
「…2年くらい前に、なるんだけど」
「…うん」
言ったっきり、昇は黙ってしまった。
何かをずっと考えている。
そのまま友香は昇の横顔を見つめる。
静かな時間が流れ、時が止まってしまったかのようだ。
「俺の父親…」
また、昇が小さな声でつぶやいた。
その言葉に答えるように、友香も小さく、
「うん…」と答える。
昇の横顔を見つめたまま。
「…自殺、したんだ…」
「自…殺…?」
「…うん」
言った昇は、今にも消えてしまいそうだった。
友香も言葉を失う。
かける言葉が、見つからない。
どうしよう、私が言わせた。
昇のこと、もっと知りたいと思った。
でも、こんな顔してほしかったんじゃない。


