しばらくして友香はクラスのことも少しはしなくては、
と教室に戻ることにした。

あまり戻りたくなかったが、
いつまでもクラス企画を放っておくわけにもいかない。

教室の近くまでいくと、昇と担任の荒谷が話をしていた。

なんだか重い雰囲気だ。

そっと近付き耳をすましてみる。

「さっき電話があってな、おまえのお母さん、職場で倒れたらしい」

「…え」

「それで、近くの病院に運ばれたらしいんだが…」

そこまで荒谷が言うと、昇はこちらに向かって走ってきた。

いきなり走ってきた昇と友香はぶつかってしまい、
昇が友香の存在に気付いた。

「えと、あ…病院、行くの?」

しぼりだすように友香が聞くと、昇は表情を曇らせ、
何も言わずに友香のそばを通り過ぎる。

何も言わずに走り去る昇の背中に友香は、



「…戻ってきてね」



と少し小さな声で言った。