教室に戻ると昇の姿も、誠の姿も見当たらず、
ほっと胸をなでおろす。
「友香っ、ようやく観念したのね。これ、当日着てね」
恵利子が友香の姿を見て話し掛ける。
その言葉もあまり耳に入らず曖昧に返事をすると、
いきなり恵利子の顔が目の前に現われた。
「わっ、な、何?」
「何かあった?」
「別に何も」
探るような目付きで恵利子はこちらを見たが、
「ふぅん」
と言ってそれ以上は詮索してこなかった。
それに甘えるわけではないが、
友香もこのことはしばらく自分ひとりで考えようと思った。
文化祭まであと少し。
不安が入り交じるなか、友香は窓の外に視線を向けた。


