「恵利子!」

友香は授業が終わったあと、すぐに恵利子のもとに駆け寄った。

恵利子はゆっくりと机の上に広げられたものを片付けて、振り返る。

そんな恵利子の行動に、友香はイライラを募らせる。

「何?」

「何?じゃないから!なんでさっきあんなこと言ったのよ!」

友香が食い付くと、恵利子はにこっと笑ってこちらを見た。

この笑顔を見せるときは、大抵いいことはない。


「興味本位」


さらっと言った恵利子に友香は半ば呆れる。

だが、恵利子はそんな友香を気にするふうもなく、こう続けた。

「まぁいいじゃない。気にしないでよ」

「でも恵利子のせいで、みんなからの質問が増えたんだから!」

イライラと怒鳴る友香に対し、恵利子はそれを軽く流すほどに落ち着いていた。

恵利子は友香の肩に腕をまわす。

そして耳元で小声でささやいた。


「恋に障害はつきものでしょ?
私としては一応、応援してるんだから頑張ってほしいわけよ」

「なんか…応援のしかた間違ってる気がするんだけど…」

つぶやいた友香の言葉に、恵利子は気付かないふりをして

「ま、そういうことだから頑張ってね」

と、友香の背中を思いっきり叩く。

かなり痛かったけど、
恵利子が応援してくれていると知り、素直に嬉しかった。

友香のイライラはすっかりなくなっていた。