少し日の落ちた道。

昇は友香と2人で歩いていた。

罰掃除も終わり帰ろうとしたときに、
ふとしたことで一緒に帰ることになってしまった。

そういえば何か言いかけていたが、何の話だろう。

しばらく無言で歩いていたが友香が何か言いたげに、
しかしどう切り出そうかと迷っているようだった。

「さっき言いかけたことって、何?」

昇が聞くと友香は少し表情を曇らせる。


「あのね、今朝のことなんだけど…」

「今朝?」

「そう、今朝有川くんと話してたときのこと」

今朝、誠と話したことと言えば、
バイトのことを聞いたときか。

「有川くんが先生に言ったのかって聞いてたでしょ?
あれ、私が有川くんに言ったかもしれない…」


そこで友香は言葉をきる。

「昇と仲いいから、バイトのこと知ってるかなって思って、
バイトしてるの?
って聞いたことあって。…ごめん」

それで友香の表情が暗かったのか、と昇は思った。

「別にいいよ。気にしてないし」

昇の言葉に、友香は少し安心したようだった。


そこでふと思い出したように友香が言う。

「そういえば、有川くんと喧嘩でもしてるの?」

その質問には、昇も一瞬ためらった。

誠の様子がおかしいのは、おそらく友香が関係しているだろう。

だが、それを友香にはあまり言うべきではない。

また謝られてしまう。


「…うん、ちょっと」

「そっか…仲直り、できるといいね」

それには返事を返さなかった。

元には戻らないかもしれない。

昇は歩きながらそんなふうに考えていた。

そんな昇の心情を察したのか、
よくしゃべる友香もこのときは口を閉じて家までの道を歩いた。