しばらくすると、耳にがやがやと雑音が入ってきた。
うっすらと目を開けてみると、もう授業が始まっているというのに先生はおらず、
黒板には「自習」と大きく書かれていた。
こんなことなら屋上にでも行けばよかったと、昇は頭をくしゃっと掻く。
「ねぇ、笹木くん」
突然名前を呼ばれ、びくっとなる。
その、名前を呼んだのが友香だったからなおさらだ。
屋上では“昇”と呼ばれていたから、
一瞬誰に名前を呼ばれたのか分からなかった。
「…何?」
「今日の昼休み暇?」
言われて視線をそらすと誠の姿が目に入る。
じっとこっちを見ていた。
「…暇じゃない」
「そっか」
あっけなく友香は自分の席に戻って行った。
教室だからだろうか。
しかし、何を自分はこんなに気にしているのだろう。
考えることが面倒でまた机の上で眠りについた。
それからバイトが終わるまで、同じような日々が続いた。
友香と話すこともなく、誠ともあまり会話はない。
そしてバイトも終わった頃、突然昇は河合に呼び出された。


