と、そこで誠がまた口を開く。


「そういえば、さっき宮内さんが昇のほうちらちら見てた」


「は?」

「俺、席が宮内さんのすぐ後ろだからよく見えるんだよね」

「…だから?」

「昇、彼女とか作らねーの?
おまえモテるほうだと思うけどな」

「俺は悪い噂があるらしいけど…」

友香が前に言ってたことだ。

「悪いとひかれるってのもあるじゃん。

少なくとも宮内さんは昇に気があると見た」

「別に、好かれてもうれしくない…」

友香のことは嫌いではなかったが、
ついそんな返事をしてしまった。

すると誠は顔をほころばせた。


そして急に小声になって話しはじめる。

「まじ?
俺実は宮内さんのこと少し気になってんだ」

昇は内心驚いたが、それは表に出さないように

「へぇ」

とだけ言った。


「宮内さんは昇のこと気になってるみたいだけど、
昇にその気がないんなら俺にもチャンスはあるよな」

「いんじゃない?がんばれよ」

言って、
なんとなく昇は胸がずきっと傷んだ気がしたが、
気にしないことにした。

自分には関係ないことだ。

それに、誠は学校で唯一、

昇がよく話す友達と呼べる相手でもあったし、

うまくいってほしかった。



「さんきゅ」

誠は笑って言った。