授業が終わったあとも、椅子から立ち上がらずに教科書をぺらぺらめくっていると、
恵利子が不可解そうにこちらにやってきた。


「…友香?
何やってんの?」

「何って…
勉強だけど…」

「珍しいこともあるのね」


言いながら恵利子は友香の前の席に腰をおろした。

頬杖をつきながら、友香の机に広げられた教科書類に視線を落とす。


「珍しいって…
それじゃあ私が普段勉強してないみたいじゃない!」


ついむきになって言い返してしまったが、
確かに普段そこまで勉強するわけではない。

だが、いまさら言ったことを撤回するわけにもいかず、少しばかり顔を歪めた。


「まぁ、いつもは眼鏡なんてかけないけど…」


そう言葉を濁すと、恵利子はくすりと笑って友香のノートにまた視線を落とす。