「この前の、って部活のこと?」


母は、父がまだお風呂からあがってこないことを目で確認してこちらに顔を向けた。


「まぁ、その話とか」


母の様子を見ると、やはり、父には何も言っていないということが予測できる。

友香はもう一押し、と少しだけ声をはった。


「成績が下がったのがいけなかったんだよね?
だったら、次のテストでは成績あがるようにがんばるから。
…いいでしょ?」

「…本当にがんばるのね?」

「うん」


母は思案しているようだった。

料理の手を止め、しばし沈黙する。


「だめ?」

「…考えておくわ。
まぁ、テストの結果次第ね」


そう言うと、母は止まっていた手を動かしはじめた。

そこで、ちょうどよく父がお風呂からあがってきた。

母はそれを目の端で捉えて、友香に視線を送る。


言われなくても、自分の首を絞めるようなことは言わないよ。


いつもどおりの食事の時間を迎えながら、友香はがんばらなきゃ、そう思った。