「あれは、もう気にしてないから忘れていいよ!」


今まですっかり忘れてたし、と友香は心のなかでつぶやく。


「そっか、ならいいんだけど」

「うん」


笑顔で昇に返事をすると、昇も笑顔を返してくれた。

それは満面の、とは言えないが、久しぶりに見た笑顔だった。

不意打ちの顔に、友香は体が熱くなるのを感じる。

それを隠そうと、何事もなかったかのように顔をそらした。

前を見て身を正すと、昇はまた口を開く。


「父さんが死んでから、ずっと“夢なんて”、って思ってた。

でも、宮内は…
夢のことを楽しそうに話してさ、

夢見るのも悪くないかな、って少しだけ思った」

「…え?ゎ、たし?」


昇に言われた言葉が信じられなくて、友香はしどろもどろに声を出した。