「…っ」


息が止まってしまったようだった。

呼吸のしかたが急に分からなくなったみたいに、息苦しさに襲われる。

危なげな足取りで父のそばまでよたよたと進んだ。


「…父さん?」


返事がないのは分かっていたが、それでも呼ばすにはいられない。


「父さんっ!」


どうしていいか分からずにパニックになった昇はなりふり構わず父を呼ぶ。


しばらくしてから、ようやく母に知らせなくては、という思考につながり、電話のもとに走った。

母の仕事場に連絡すると、母は、

「…ぇ?」

というような、上ずった声を出した。

すぐに母は帰ってきた。

走って帰って来たのだろう、息が切れて肩で息をしていた。

玄関先で母を迎えて、父がいる場所を指で差して伝える。

きちんと差したつもりの指は、弱々しく震えていた。