学校でも、当然顔の傷のことは聞かれた。

昇は転んだのだと言い張ったが、変な噂はまた流れてしまい、いい加減昇もうんざりしていた。


噂の目をかいくぐるように、学校が終わるとすぐに昇は家へと足を走らせる。

今日は、父の仕事が早く終わる日だ。

そう思って走るスピードをあげた。


「ただいまー」


返事はない。

まだ帰ってきてないのか。

玄関に足を踏み入れたとき、なんだか嫌な予感に襲われた。

何か、重たいような、冷たいような、そんな空気を肌で感じ、
昇はそこで足を止める。

家のなかに入りたくなくて、ごくりとつばを飲み込んだ。

もしかして、またあの男たちが来ているのだろうか。

しかし、玄関にそれらしき靴はなかった。

意を決して昇は靴を脱いで家のなかに入る。

不安は高まり、心臓の音がうるさかった。