家に帰ると、やはり何もしていない父が力なく座り込んでいた。

父はあれから、ケーキを作ることさえもやめてしまい、活力がまったくなくなってしまったように見える。


「…ただいま」


控えめに言うと、父も同じように、


「おかえり」


と返してくれる。

だが、違和感を感じてしまうのだ。

今日は、座り込んでいる父のそばに行って、以前のように昇も座った。

あまり反応を見せない父に、昇は問う。


「父さん…もうケーキ作らないの?」


その問いに、少しだけ反応はあったが、期待したような返事はなかった。

気にしないように、また次の言葉を紡ぐ。


「母さんも、今がんばってくれてるんだし…
父さんもがんばろうよ。

俺も何か手伝うからさ…」