その場に立ち尽くしたまま、昇は体が震えるのを感じた。

これは、悔しさからだ。


このままここにいたら、またひどいことを言ってしまうと思った昇は、ゆっくりと身をひるがえす。

背をむけたときに、父から声をかけられた。


「昇、ケーキ屋…やめることにしたんだ…

ごめんな」


実際、言葉にされて言われて、なぜだか涙が出そうになった。

返事はせずに走って自分の部屋にかけこむ。


もっと何か言ってあげられることはなかったのか。

ひどい態度や言葉をかけてしまったことに、後悔が押し寄せる。



ごめんな――


今は、その言葉が胸に痛い。

何かが音をたてて、がらがらと崩れ落ちていった。