「昇には、見られたくなかったんだけどな。
変なとこ見せてごめんな、昇」

「そんなことないよ。大丈夫だから…」

かすれたような声が出た。

喉が乾いて舌が貼りつく。


「…昇、実はな…

うちには借金があるんだ。

このままじゃ、また今の奴らが来て、満足に生活もできなくなる」


こちらを見ないまま、父は続ける。


「父さんの、わがままに付き合ってくれてありがとう。
約束、守れなくてごめんな」


なんとなく、意味は分かったのに、昇は認めたくなくてつい聞き返した。

父がまた辛い顔をすると分かっていたはずなのに。


「どういう、意味…?」


思ったとおり、父は少し顔を歪めた。

返事はない。


「ねぇ、母さん、」


母にも声をかけたが、母も返事をしてはくれなかった。