父の言ったことに、ただ頷くしかできなかった。

だが、慰めの言葉をかけても、父をきっと傷つけてしまうだろう。

頷くことだけが、昇にできることだった。


何もしてあげることのできないことに、昇の頭が自然とさがる。


「昇とも、約束したし、がんばらないといけないよなぁ」

「…うん」


もう、そんなにがんばらなくてもいいよ。


そんな言葉が口から出てきそうになったが、ぐっと飲み込んだ。

最後まで、応援してあげたい。

母もきっと同じ気持ちなのだろう。

だから、何も言わない。



次の日から、父はまた仕事をがんばりはじめた。

例え今はお客が来なくても、がんばっていれば、いつかは報われる。

そう信じて、いろいろなところで宣伝もした。

だが、それでも売り上げは伸び悩み、父からはどんどん元気がなくなっていった。