こんな日もある――


そう言った父の言葉を裏切るように、お客がこない日は続いた。

たまに来るお客は、昇の友達や、父の会社の元同僚たちだった。

彼らもケーキ屋の噂を少し耳にしていたようで、
顔には心配の色を浮かべていた。

また、強がるようにして笑う父は見ていて痛々しい。


夜、食事を済ませた頃、父は窓際に腰をおろして外を眺めていた。

母はそんな父を刺激しないようにと、暗い表情を隠して、てきぱきと台所で働いていた。

昇もそうしていたのだが、この日は父のそばまで行って、隣に腰をおろした。

そして父の表情をうかがう。


「昇、父さんなぁ、ケーキ屋になるのが昔からの夢だったんだよ」

「…うん」

「こんなことでこけてられないよなぁ」

「…うん」