その日、店には思っていた以上の人がやってきた。

昇の友達だけではなく、父の会社の同僚だった人。

それに知らない人たちもたくさん足を運んでくれた。

ガラスケースの中に敷き詰められていたケーキは、今ではぽつぽつと数えられるほどだ。


その結果に父は喜びを隠せないようで、閉店したあとも始終にこにこしていた。


「あなた喜びすぎよ!
油断してると危ないんだからね」

憎まれ口をたたきながらも、顔は笑いを抑えきれない母。

母も喜んでいるのは明らかである。


「分かってるよ、気は抜かないさ」

「本当かしらねぇ、昇?」

いきなり話をふられて、「え、俺?」というような顔をすると、
2人は笑いだしてしまった。

何がおかしいのか笑いはおさまらない。

残ってしまったケーキをフォークで突きながら、昇も笑みをこぼした。