昇と母は、並んで座り、それに対峙するように父が座った。

父の面持ちはとても重い。

何の話だろうかと昇は眉根をよせる。


「何?あなた、改まって…」


母も不安そうな顔をして父の顔を見つめた。


「突然、ってわけでもないんだけど…」


迷うように、そこで父が言い淀む。

下を向いていた顔をあげて、こちらを真面目な顔で見据える。


「会社を、

辞めようと思うんだ」


父の言葉に昇は「は?」と少し固まる。

仕事を辞めて、どう生活していくつもりなのかと。


母のほうに目をやると、意外にも落ち着き払った様子の母がいた。

もっと驚いて、少しくらいは取り乱した母を想像したのだ。


「え、母さん?
なんで、そんなに落ち着いてるの?」


不審に思った昇は母に直球で尋ねる。