ケーキと言われて、昇はぴくりと反応する。


「俺の父さん、ケーキ作ってるんだ」

言っている昇は少し自慢気だ。


「えー、すごーい!それで甘い匂いがするんだね」

「今度遊びに行っていい?俺も食べたい」


称賛の目を向けられ、昇はますます嬉しくなった。


「あぁ、いいよ。父さんに聞いてみるよ!
かなりおいしいから、絶対みんなびっくりするよ」


言いながら、甘い匂いに気付かなかったのは、鼻が慣れてしまったからだろうな、と思った。

それほど染み付いてしまっているのだ。


そのことを家に帰って父に言うと、


「あぁ、いいぞ。お友達にもおいしいケーキ食べさせてやらないとな」


と、嬉しそうに了承してくれた。


「父さんのケーキはおいしいから、みんな喜ぶよ!」

「そうだといいなぁ」


そんなふうに楽しい毎日を送り、いつしか昇は中学生にまで成長した。