何も話さずに、ただ吹いてくる小さな風を感じていた。

自分が会えないかと聞いたのだが、話しだすきっかけが掴めない。


友香も気まずいのか、ベンチに腰をおろしたまま、うつむいてしまっている。


このままでは意味がないか、と昇は重い口を開いた。


「…今日、どうしたの?」

「……行きたく、なかったから…つい、さぼっちゃった」


友香が学校をさぼるのはかなり珍しい。

病気じゃないとしたら、やはり何かあったのだろう。


「何か、あった?」


そう聞くと、やはり、電話のときと同じように友香は黙りこくった。


「言いたくなかったら、いいんだけどさ」


場を取り繕うように昇が言うと、友香は口を小さく開き、何か言おうとした。

まだ、話す決心がつかないのか、開かれた口はまたゆっくり閉じられる。

それを何回か繰り返して、友香は顔を歪めた。

そして軽く深呼吸した。