「昇ー、おまえまた遅刻してきたな。進級できなくなるぞ」
授業が終わり、昇のもとにクラスで比較的よく話す有川誠(ありかわ まこと)が話しかけてきた。
「別に、進級できなかったら辞めるつもりだし」
「そういったって、いまどき高校中退なんていったら就職困るじゃん」
「選り好みしなかったら仕事なんていろいろあるし」
昇は淡々とした返事をして、誠から視線をそらした。
人の目を見て話すのはあまり得意でないのだ。
誠は、そんな昇の行動にはそこまで頓着しない。
だからこそクラスの中ではよく話すのかもしれなかった。
「なあなあ、今日帰りに遊びに行かないか?」
やはり、誠は何も気にせずに次の話を始めた。
そういえば、誠は友香と似ているかもしれない、
そんなことを思いながら昇は誠の話を聞いていた。
遊びに行くのはあまり気がむかなかったから、とりあえず断っておいたが。


