「前、言ったでしょう?何度も言わせないで」


お父さんには言ってないんだから、と母は続ける。


母はなんにも分かってくれない。

私だって、歌手になる、って言ってることが、小さい女の子がお姫さまになる、なんて言ってるくらいに馬鹿げてるって分かってる。

でも、夢は見なければ叶わない。

何もないところに、何かが突然生まれたりしないみたいに。


だけど、少しくらいは応援してほしい。

頭ごなしに否定されて、あれをしろ、これをしろ、って。


私はどうしたらいいんだろう。

分からないよ……


友香の瞳に、また涙が浮かんだ。

だけど、この人の前でなんて泣きたくない。

悔しさを握り締めて、友香は下唇を噛んだ。