そう言ってからの恵利子の行動は早かった。

ブレザーのポケットから携帯電話を取り出すと、昇のものも出すようにと強要した。


昇はしぶしぶといったように携帯電話を取り出すと、恵利子は素早い動きで友香の連絡先を昇のそれに入れた。

そして何事もなかったように、それらをしまい込む。

学校では携帯電話の使用は禁止されているのだ。

禁止とはいっても、みんな普通に隠して持ってきていた。

見つかった場合は没収されてしまうので、見つからないように必死だ。


「じゃ、入れておいたから友香に連絡してみてよ」

それにしても、と恵利子は続ける。


「笹木くんて古い携帯使ってるのね」


昇のポケットを指差しながら、恵利子は昇の前の席に腰をおろす。

まだ何かあるのか、と昇は恵利子の行動を目で追った。


「それ、かなり古い型じゃない?」


「俺んとこ貧乏だから」

と恵利子に言ってしまうのはなんとなくはばかられたので、昇は、

「気に入ってるから」

とごまかす。

そこでタイミングよくチャイムが鳴り、あ、と恵利子は自分の席に戻っていった。