次に聞こえてきたのは目覚ましのけたたましい音。

まだ意識とは別の場所でその音を聞き、安眠の邪魔をされたことに無意識に眉根を寄せた。


いつものように、目覚まし時計の音を止めたところでようやく“起きる時間”だということを認識し、ゆっくりと起きだす。


珍しく早く起きれたことに自分でも驚き、あくびをひとつした。


まだ寝起きで足元がおぼつかないが、どうにか居間まで行くと、母がさも珍しそうに昇の顔を見た。


「珍しいわね、早く起きてくるなんて。今日は何もないんでしょ?」

何か大事なことがあるときでも遅く起きていた昇。

それを知っている母は、不思議そうな面持ちで、

「まぁ、早起きはいいことだしね」

などと言っていた。

母は時計を見てから、仕事の時間だ、と家をあとにした。

仕事に行くのを見送るのは、本当に久しぶりだなぁと昇は思い、少し自嘲的な笑みを浮かべた。


見送ったときの母の顔が、嬉しそうだったのだ。