その日、家に帰った友香はいい匂いに、お腹が鳴るのを感じ、
急いで靴を脱ぎ捨てた。


「ただいまー」


台所に立つ母に声をかけ、その横に走り寄る。

その手元をのぞきこんで、ますますお腹がすいてしまった。

母はおいしそうなシチューを作っていた。


「おかえり。今日の文化祭はどうだった?」


料理をする手を休めないままに母は友香に問い掛ける。


「成功。ソロもうまくいったよ」

「そう、じゃあ荷物おいてらっしゃい。ごはん、そろそろできるから」


頷き、荷物を片付けてこようと身を返したときだった。


「友香、」

「え、何?」


上体だけを母のほうにむける。


「あとで、話あるから、」

中途半端なところで区切ったので、まだ何か続きがあるのかと思ったが、それ以上話す気配がなかった。

友香は頭にはてなを浮かべたまま、訝しげに母を見るが、
まあいいか、と片付けに部屋を出た。