「友香、さっきの体育の時間、どこ行ってたの?」

「どこって…保健室」

教室に戻ると、友香は友人・三田恵利子(みた えりこ)から体育の時間にいなかったことを聞かれる。

普段よくしゃべる友香だが、こういうときにごまかすのは苦手だ。

「なんか、怪しい。そういえば、笹木くんもさっきの時間いなかったよね?」

「そっ、そうなんだ」

友香はばれないようにと作り笑顔をむける。

屋上での昇とのやりとりは、友達といえど、あまり知られたくなかったのだ。

しかし、完全に昇がからんでいるなと思った恵利子は

「笹木昇ってあんまりいい噂聞かないじゃん。やめときなよ」

「そんなことないよ!昇は…」

「昇?」

しまった!

と友香は口に手をやるも、もう遅かった。

恵利子は、

「やっぱりそういうことなんだ?」

と怪しい笑みを浮かべていた。

「…今度何かおごるから、今の秘密だよ?」

「やった」

と恵利子は上機嫌な顔で友香のほうを見た。

友香は、はあっと息をついた。