さて、帰るか。

そう言うと友樹は立ち上がり家に向かって歩き始めた。
数分後、道路脇に見慣れない神社があるのを見つけた。
幼い頃から住んでいる友樹も初めて見る神社であった。

あれ?
こんなところに神社があったのか。知らなかったな。

神社の脇ののぼり旗には縁結びの文字。
親友の命日に縁結び。
友樹は何か引き寄せられるものを感じた。

せっかくだし、お参りして帰るか。

神社に足を踏み入れる友樹。
中は以外と小さく、すぐに賽銭箱まで辿り着いた。
友樹は財布から五円玉を取り出し、賽銭を入れ、手を合わせた。
もちろん、祈るのは親友のことであった。

大輔、お前にもう一度逢えるなら、あの時言いかけた言葉を教えてくれ。
…なんてな。あり得ないよな。

参拝を終えた友樹はそう呟きつつ、神社を後にした。

神社から出ると、ふと遠くから光が近づいてくるのを感じた。
遅い時間だったこともあり、友樹は車のヘッドライトか何かと思った。
しかし、その光はだんだんと大きくなり、友樹に近づいてくる。

ちょっとまて!
あの車、こっちに突っ込んで来てる!

ここで俺まで事故るわけにはいかない。
友樹は光から逃げるように走り出した。
しかし、その光は走って逃げ切る友樹へどんどん近づいてくる。

も、もう…駄目だ。

逃げ切ることを諦めた友樹。
光は近づくにつれて大きくなり視界を完全に覆ってしまった。
友樹は眩しさのあまり目を閉じる。


…あれ?



轢かれる覚悟をした友樹だったが、一向に車が突っ込んでくる気配がない。
何が起こったのか訳が分からず、友樹は目を開く。



そんな…嘘だろ?



友樹は驚きを隠せない。


先ほどまで真っ暗だったはずが、辺りが明るくなっている。
周囲には帰宅している学生達。
そして、目の前には制服を着た大輔が立っていた。

友樹は頬をつねってみた。
…痛い。
夢ではないようだ。


いったい…どうなっているんだ…


友樹はただただ立ち尽くすことしか出来なかった。