環は巽のバイクで、自宅近くまで送ってもらう事にした。

この時間だ、流石に一人歩きさせる訳にはいかない。

「巽さんはこれからまた仕事ですか?」

バイクのリアシートで、環が訊く。

「ああ」

警視庁捜査一課所属とはいえ、倉本も巽も特別な位置付けの刑事だ。

刑事部長からのミッションが下されれば、管轄は勿論、管轄外の地域にでも赴く。

歌舞伎町だろうが、東京都外だろうが、日本全国どこへだろうと。

彼らに長い眠りなど許されない。

そんな巽の背中に、環はギュッとしがみ付く。

無理をしないでほしい、体を壊さないでほしい。

ただそう祈るばかりだ。