倉本と巽は、新聞社から警視庁に送られてきた犯行声明を確認する。

犯人の要求…金銭や服役している仲間の釈放などは、一切書かれていなかった。

所謂犯行声明文としては、異例ともいえる内容だった。

『現代文明の発展は人間性や生態系を破壊する』

『産業革命は絶対悪であり、文明社会を発展させる為に追求した技術の進化によって、それを創造した人類もが支配されてしまう』

そう主張した上で、自然への回帰を促す内容。

「何だこりゃあ」

刑事部長が眉を顰める。

「成程」

倉本は納得したように呟いた。

航空機テロやパソコン店爆破は現代文明の象徴を狙ったもの、大学の遺伝学者や教授の爆殺は文明社会を発展させる為に追求した技術の進化の担い手達、木材業界の団体代表は自然への回帰を阻害する象徴。

環を狙った事は世間の注目を浴びる為としても、全て無関係のようでいて、犯人の主張に沿った標的だ。