年の瀬が近づき、歌舞伎町もどことなく慌ただしくなってきた。

道行く人々はコートやダウンジャケットなど温かな服装が目立ち始める。

街に流れるのはクリスマスソング。

年中華やかなネオンに彩られるこの街も、いかがわしさはナリを潜め、この時期だけはクリスマスらしい華やかさが前に出る。

「いいわねえ、もうすぐクリスマスかぁ」

診療所の窓から、田中 美奈(たなか みな)は頬杖をついて外の様子を眺めた。

今夜は患者もなく、退屈な時間を過ごしている。

が、医者など暇でいいのだ。

何なら毎晩こうして外の景色を眺めているくらいの方がいい。

風邪の患者やお年寄りの健康診断程度でも、美奈1人ならば食べていけるのだから。