足元の砂が波に運ばれる。
なんとなく、こそばゆいような感覚が足の裏をくすぐる。
海の水は冷たく気持ちいい。
長時間のドライブの疲れを癒やしてくれる気がした。

海水浴シーズンも終わったからか、広く続く海岸には、人の姿はまばらだった。
遠くでは波に戯れる大型犬とその飼い主の姿が見える。
飼い主が投げたボールを海の中まで取りにいき、そのボールをくわえて再び飼い主のもとに戻る。
そんな、長閑な風景に自然と笑みがこぼれてしまう。

「ねぇねぇ、駿平君。これ見て」

ひとみさんが、ボクのもとに駆け寄ってきた。
なにかを大切そうに、その細い手に握りしめている。

「ほら、これ。キレイでしょ?」

そう言って、彼女は手のひらを開いた。
その中には小さな淡いピンク色の貝殻があった。

「サクラ貝っていうんだったかなぁ。かわいらしいですね」

ボクの言葉に、ひとみさんは無邪気な笑みを浮かべた。

なんか、なんていうか、うん。
来て良かった!

ボクは不思議とそんな気持ちになることができた。