ふふふふ、ボクは勝った!
ひとみさんに勝った!
完全に彼女は怯えきっている。
ボクの話した、とびっきりの怪談に、ひとまわりも年上の彼女が顔面蒼白で怯えきっている。
「ひとみさんが、もっと怖い話をしてって言ったんですよ」
勝ち誇ったボクは見下ろすように彼女に言った。
「もぅ、だからって、今の話は、怖すぎるよ」
彼女の瞳に光るものが見えた。
さすがにちょっと、かわいそうな気もした。
「じゃあ、もう怪談はおしまい」
ボクはそう言って、アロマキャンドルの火を消した。
真っ暗な闇に包まれた瞬間、彼女の悲鳴ににた声が聞こえた。
ボクはすぐさま電灯を点けた。
「しゅ、駿平君、こ、怖かったよぉ」
ひどい顔をしている。
でも、美人は変な顔でも美しい、ふとそんな事を思った。
「じゃあ、もう1本ビール飲みますか?」
ボクの言葉に、彼女は鼻を啜りながら頷いた。
彼女は缶ビールを一気に飲み干した。
「ひとみさん、そんな怖かった?」
ボクは彼女に訊いた。
ひとみさんは、壊れた人形のようにカクカク頷いた。
「なんなのよぉ、あの話。もう二度と聞きたくない」
ビールで喉が潤ったのか、それともアルコールで多少気分が落ち着いたのか、彼女の言葉は滑らかだった。
「寮生活の頃、寮長さんがしてくれた話なんだ。ボクも当時はガタガタ震えましたよ」
ボクは当時のことを思い出しながら、ビールを口に運んだ。
あまり、いい思い出はないけど。
気分が重くなる前にボクは席を離れた。
「じゃあ、ひとみさん、おやすみなさい」


