ひとみ



「確かに、アロマキャンドルじゃね。今度、非常袋と一緒に買い揃えておきますよ」

ボクもやっと普通にひとみさんを見れるようになった。
わざわざ、話を逸らせてくれたのかな、彼女?

「ねぇねぇ、駿平君。そのアロマキャンドル、今使ってみない?」

彼女は好奇心を含んだ視線でボクを見た。

「いいですけど。じゃあ、もってきますよ」

ボクは部屋に戻った。
本棚の上の箱を取りまた居間に戻る。
箱の中には色々説明書きがされていた。

「じゃあ、早速火を点けよう」

彼女は子供のような無邪気な笑みを浮かべた。
そして、愛用のライターで火を灯した。
火の灯った瞬間、フワッと柔らかな香りが広まった。

「いい香りねぇ。なんかキレイだし。あっ、駿平君、電気消してみて」

ボクは彼女に言われて、蛍光灯のスイッチを切った。
暗くなった部屋に、小さな灯りが仄かに揺れる。

「なかなか雰囲気あるわね。駿平君、ビール持ってきて。一緒に飲もうよ」

彼女は子供みたいに、はしゃいでいた。

「ハイハイ、ビールですね。ついでに家中真っ暗にしますか?」

ボクの提案にひとみさんは親指を立てた。
缶ビールを2本持ったまま、ボクは家中の電気を消してまわり、ろうそくの灯火をうっとり見つめる彼女の前に座った。
揺れる仄かな灯火に映し出される彼女の顔は、とても美しかった。
思わず見とれてしまう。
口さえきかなきゃ、すごい美人なのにね。