ひとみ



雨に濡れたTシャツは体にくっ付いて不快だった。
まして、水分をたんまり吸い込んだジーンズに至っては、不快なことこの上ない。
脱衣場で体に纏わりつく衣類を脱ぎ捨て、ボクは風呂場に入った。
頭からシャワーを浴び、雨に濡れた不快感を流し落とす。
脱衣場に人の気配を感じた。

ん?ひとみさんか?

脱衣場から彼女の声が聞こえた。

「駿平君。私も一緒に入っていい?」

明らかに冗談とわかる、口調だった。
だけど、ついボクは真に受けてしまう。

「いいわけ、ないでしょっ!」

そう言いながら、改めて自分が全裸で無防備な状況であることに気付く。
変な恐怖心と微妙な期待感の交錯が熱い衝動となり背筋を駆け抜ける。

「バカねぇ、駿平君。冗談に決まってるじゃない。そういことは、ベッドの上じゃなきゃしない主義なのよ、私」

ケラケラ笑いながら、ひとみさんは言った。

「着替えここに置いておくから、ごゆっくり」

ボクは何ともいえぬ、安心感と虚脱感に体を包まれた。
そして、その直後、浴室の灯りが消えた。
ひとみさんがからかって消したにちがいない。

「ひとみさん!ふざけないでくださいよ!早く電気点けてください」

ボクは大声で彼女に言った。

「しゅ、駿平君。イタズラじゃないわよ。停電みたいよ。暗くてなんにも見えないわ」