アルバイトも終わり、ボクは帰路についた。
さすがに夏だけのことはある、夕方6時を過ぎても充分に暑い。
夕暮れとはまだ呼べない明るさの中、纏わりつくように鳴くセミの声に不愉快を感じてしまう。
遠くの空は黒い雲に覆われている。
夕立なのだろうか、そこには稲光が見ることができた。
こっちに雨雲がくる前に帰らなきゃ、ボクはそう思い、歩みを速めた。
でも家まで、まさに50メートルの所で、土砂降りの雨に遭遇してしまった。
猛ダッシュで家に帰ったものの、ボクは頭からバケツの水でもかぶったような有り様だった。


「あららら、ずいぶん派手にやられたわね」

ボクの姿を見て、ひとみさんはおかしそうに笑っていた。

「また風邪ひいても困るし、お風呂入ったら?」

彼女に言われるまでもなく、ボクはそのつもりだった。
玄関の外には、激しく降る雨と、雷の鳴り響く音が聞こえる。

ったく、あと1分早かったら普通に家に帰れたのに。

誰のせいでもないのはわかっている、だがボクは心の中で軽く喚きたい気分になった。