ひとみさんが出て行ったあと、ボクは再び寝てしまったようだ。

額に触れるヒンヤリとした存在に気付き、ボクは目を開いた。

「ごめん、また起こしちゃったわね」

ボクの視界には、少し心配そうな表情のひとみさんの顔が浮かんだ。

「プリン買ってきたけど、食べる?薬も買ってきたから飲まなきゃね」

いつになく優しい彼女にボクは素直に頷いた。

「ありがとうございます」

そう言って、ベッドの上で上半身を起こす。
少しだけ頭痛が残っている。

「はい、コレ」

ひとみさんはそう言って、高そうなプリンをボクに手渡した。

「美味しそうだから、私の分も買っちゃった。役得ね」

彼女は舌をチロリと出して微笑んだ。

上品で柔らかい甘味が口の中に広がっていく。

「美味しいですね、コレ」

ボクの言葉に、彼女は満足そうな笑みを浮かべた。

「さぁ、甘くて美味しいの食べたら、次は苦いお薬の出番よぉ~」

ひとみさんは仰々しく袋の中から風邪薬を取り出した。
ボクは彼女から水と薬を受け取り、一気に飲み込んだ。

「薬も飲んだし、しばらく寝た方がいいわね。私、ここにいるから、ゆっくり休んで」

ひとみさんは、そう言って椅子に腰を下ろした。