彼女にはどうも静かすぎる図書館は合わないらしい。
あっちへウロウロ、こっちへウロウロしながらたまにボクのそばに来て読書の邪魔をする。
結局、読書にまったくもって集中できないので、ボクは本を借りることにして、図書館を出ることにした。

「ったく、ひとみさん、読書の邪魔しないでくださいよ。全然、話が頭に入ってこなかったじゃないですか」

軽く彼女に抗議してみたが、ボクの抗議などどこ吹く風。

「だって、ヒマなんだもん。ねっ、ねっ、それよりいい天気だし、デートしよ、ねっ?」

いったいこの人の頭の中はどうなってんだ、と素朴な疑問が湧き上がる。

「なぁにがデートですか。いつからそんな関係になったんですか?ボクら」

ボクの言葉にニヤニヤしながら彼女は言った。

「なによ、私の裸見て喜んだくせに。こういう時だけいい子ぶって。私たち、ひとつ屋根の下に暮らしてるのよ。それもふたりっきりでさ」

彼女の言葉に、思わず拝見してしまった彼女の姿を思い出してしまった。
そんな状況で、次の言葉に困って黙っていると、ひとみさんはボクの腕に彼女の腕を絡めてきた。

「ホント、純情ね。それこそ私が光源氏になってキミのこと育ててあげたいわ」

彼女の冗談を真に受けてしまいそうになる自分自身が情けなくてしかたない。